2019年 02月 10日
『ひとりずもう』が傑作だった話 |
こんばんは。
長らく更新していなかったのですが、久々にいい本と出会えたので忘れないうちに感想を書いとこうと思います。先日お亡くなりになった、さくらももこさんの『ひとりずもう』という漫画です。エッセイ版もあるようですが、私は漫画版を読みました。これが本当に傑作でした。
『ひとりずもう』はまるちゃんのその後、つまり小学校高学年から中学時代、高校時代、短大時代を経て漫画家デビューするまでの話が描かれています。まるちゃんのイメージはアニメのそれしかなかったのですが、アニメのまるちゃんとは違ってももちゃんは少し内気で色々なことを考える人だったんだなあと思いました。
周りのクラスメートがファッションやら恋愛やら東京への憧れやらで盛り上がっているときに、ももちゃんはそれらに興味が持てず、ぼーっと考え事をしていたり、たまちゃんと花を見に行っていました。まさか高校の文化祭に興味が持てずに勝手に帰宅するレベルとは(笑) それだけ、自分である程度考えて納得してから行動したい人のように見え、筋が通ってるなあと感心しました。
一番印象に残っているのは、高校時代です。漫画家になりたいという思いを密かに抱きつつも、「私が手塚治虫と同じ職業になるなんてムリ!」と否定し続けていました。しかし、ようやく腹を決めて初めて『りぼん』コンクールに応募した結果……入賞は無理だと思いつつもAランクは堅いと踏んでいたももちゃんでしたが、現実はBランクという評価。すごくリアル。自分の理想と現実が離れすぎてる感じが。
でも、そこからのももちゃんがすごかった。少女漫画はだめでもエッセイなら、と別の道に活路を見出し、友達付き合いもほとんどせずにひたすら漫画を描いてはコンクールに応募、応募、応募。疲れそうですけど、このときのももちゃんは何かを見つけたようでとても生き生きとして見えました。
そして、最後のたまちゃんとの別れ。たまちゃん、こんなに英語が好きだったんだ……。と、意外な一面を知りました(笑) 仲良しでずっと一緒にいると思ってたけど、いつかは別れも来る。ももちゃんたちも例外ではなかったようです。私も地元ではない中学校に進学したので仲の良かった人たちと軒並み別れ、進学先でも仲の良かった人が途中で転校し、そして大学進学で地元を離れ大阪に出てくるというこれまでの人生をつい振り返ってしまいました。
普段のアニメからするとゲラゲラ笑えるようなシーンは少ないと思いますが、将来や人付き合いに漠然とした不安を抱くももちゃんはとても他人事とは思えませんでした。でも、シュールな笑いは健在だったのでそれほど暗い話でもありません。何より、ヒロシ(父)の優しいこと優しいこと。余計な口出しをせずに娘を信じてでーんと構えている姿は見習いたいです。
ということで、『ひとりずもう』の感想を書きました。漠然とした不安を抱えている人には特におすすめだと思いました。これからも時々読み返したい一冊です。
by luckyboy4155
| 2019-02-10 23:33